DAPとインコタームズとは?貿易で使われる重要な言葉の意味を解説

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  • 2025/08/27

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    みなさん、こんにちは!フライングフィッシュの広報担当です。国際物流の現場で、「DAP」や「インコタームズ」という言葉を耳にしたことはありませんか?これらは国際貿易において、売り手と買い手の責任分担を明確にする重要な規則です。特に昨今のグローバルサプライチェーンの複雑化により、取引条件の明確化はますます重要になっています。この記事では、DAPを中心にインコタームズの基本から実務での活用方法まで、輸出入に関わる企業担当者の皆様に役立つ情報をご紹介します。

    インコタームズとは?国際貿易の共通言語

    国際貿易では、国や地域によって商習慣や法制度が異なります。そのため、売り手と買い手の間で責任の範囲や費用負担について誤解が生じやすい環境にあります。そこで登場したのが「インコタームズ」です。

    インコタームズの定義と目的

    インコタームズ(INCOTERMS:International Commercial Terms)は、国際商業会議所(ICC)が制定した国際的な貿易取引条件のルールです。1936年に初めて発表され、貿易環境の変化に合わせて定期的に改訂されてきました。最新版は2020年版となっています。

    このルールは、国際取引における売り手と買い手の間で商品の引き渡し条件を明確にし、責任・費用・リスクの分担を標準化するという重要な役割を担っています。言葉の壁や商習慣の違いによるトラブルを未然に防ぐための「共通言語」とも言えるでしょう。

    インコタームズの重要性

    なぜインコタームズが重要なのでしょうか?それは国際取引において、以下のような明確化をもたらすからです。

    • 商品の引き渡し場所と時期
    • 運送費や保険料の負担者
    • 輸出入通関手続きの責任者
    • リスク移転のタイミング
    • 各種書類の準備責任

    これらが明確になっていないと、予期せぬコスト発生や納期遅延、最悪の場合は法的トラブルに発展する可能性があります。フライングフィッシュでも、お客様との取引開始時には必ずインコタームズの確認を徹底しています。

    DAPとは?その特徴と実務上の位置づけ

    インコタームズの中でも、特に近年注目されているのがDAP(Delivered At Place:仕向地持込渡し)です。グローバルサプライチェーンの複雑化に伴い、柔軟な対応が可能なDAPの採用が増えています。

    DAPの基本的な定義

    DAPとは、2010年版のインコタームズで導入された比較的新しい取引条件です。「Delivered At Place(仕向地持込渡し)」の略称で、売り手が買い手の指定する仕向地まで貨物を持ち込む条件を指します。

    具体的には、売り手は輸出通関を済ませ、指定された仕向地まで貨物を輸送する責任を負います。一方、買い手は輸入通関と関税・税金の支払いを担当します。貨物の引き渡しは荷卸し前の輸送機関上で行われるため、荷卸しは買い手の責任となります。

    DAPが生まれた背景

    DAPは2010年版インコタームズの改訂で誕生しました。それまであったDAF(国境持込渡し)、DES(本船渡し)、DDU(関税未払持込渡し)などの条件を統合・簡素化する形で導入されました。

    この統合により、より柔軟な取引条件が可能になりました。例えば、海上輸送だけでなく航空輸送や陸上輸送など、さまざまな輸送モードに対応できるようになりました。

    DAPのコストとリスク分担—売り手と買い手の責任範囲

    DAPを理解する上で重要なのは、売り手と買い手のそれぞれがどのようなコストとリスクを負担するかという点です。ここでは、その詳細を掘り下げていきましょう。

    売り手の責任範囲

    DAPでは、売り手は指定された仕向地まで貨物を届ける責任を負います。具体的には以下のような責任範囲となります。

    • 商品の梱包とマーキング
    • 輸出国での通関手続き
    • 輸出にかかる税金や手数料の支払い
    • 主要輸送契約の締結と費用負担
    • 貨物到着までのリスク負担
    • 到着通知の提供

    売り手にとって、物流全体をコントロールできる利点がある一方で、輸送中のリスクや費用を多く負担することになります。

    買い手の責任範囲

    一方、買い手の責任範囲は以下のようになります。

    • 輸入国での通関手続き
    • 輸入関税や税金の支払い
    • 指定された仕向地での荷卸し作業
    • 荷卸し以降のリスク負担
    • 引き渡し後の輸送手配(必要な場合)

    買い手にとっては、自国内の手続きと費用のみに集中できる利点があります。特に海外の物流事情に詳しくない企業にとって、DAPは利用しやすい条件と言えるでしょう。

    リスク移転のタイミング

    DAPでは、リスクの移転は指定された仕向地に貨物が到着し、買い手が引き取れる状態になった時点で発生します。これは非常に重要なポイントです。

    例えば、貨物が港に到着したものの、悪天候で荷卸しが遅れているケースを考えてみましょう。DAPの場合、荷卸し前の輸送機関上での引き渡しが原則なので、荷卸しの遅延によるリスクは買い手が負うことになります。このような微妙なケースでもトラブルを防ぐため、契約書に明確な取り決めを記載することが重要です。

    責任項目 売り手の責任 買い手の責任
    輸出通関
    主要輸送
    輸入通関
    関税支払い
    荷卸し作業
    リスク移転時期 指定仕向地での引き渡し時

    DAPと他のインコタームズとの比較

    DAPの特徴をより深く理解するために、他のよく使われるインコタームズと比較してみましょう。それぞれの条件にはメリット・デメリットがあり、取引の状況に応じて最適な条件を選ぶことが重要です。

    DAPとDDPの違い

    DAPと最も混同されやすいのがDDP(Delivered Duty Paid:関税込持込渡し)です。DAPとDDPの最大の違いは、輸入通関と関税の負担にあります。

    DDPでは、売り手が輸入通関と関税支払いまで担当するため、買い手は指定された場所で貨物を受け取るだけでよくなります。これに対してDAPでは、輸入通関と関税は買い手の責任です。

    DDPは買い手にとって最も手間がかからない一方、売り手にとっては最も負担が大きい条件です。輸入国の通関制度に詳しくない売り手にとっては、予期せぬコストやトラブルが発生するリスクがあります。

    DAPとFOB/CIFの違い

    FOB(Free On Board:本船渡し)やCIF(Cost, Insurance and Freight:運賃保険料込み)などの船積み条件と比較すると、DAPは売り手の責任範囲がより広くなっています。

    FOBでは、売り手の責任は船積みまでで、その後のリスクと費用は買い手が負担します。CIFでは、売り手が目的港までの輸送費と保険料を負担しますが、その後の通関や陸送は買い手の責任です。

    売り手が指定された仕向地まで責任を持つ、DAPはドア・ツー・ドアの物流が求められる現代のサプライチェーンに適していると言えるでしょう。

    条件 輸出通関 主要輸送 輸入通関 関税支払い 最終配送
    FOB 売り手 買い手 買い手 買い手 買い手
    CIF 売り手 売り手 買い手 買い手 買い手
    DAP 売り手 売り手 買い手 買い手 売り手
    DDP 売り手 売り手 売り手 売り手 売り手

    ビジネスシーン別の最適条件

    どのインコタームズを選ぶべきかは、ビジネスの状況によって異なります。以下のようなケースではDAPが特に適しています。

    • 買い手が輸入通関を自社で行いたい場合(関税率や規制に詳しい場合)
    • 売り手が輸送全体を管理したいが、輸入通関の負担は避けたい場合
    • 買い手が輸入国内の特定の場所まで配送してほしい場合
    • 双方が責任範囲を明確にしたい複雑な国際取引の場合

    フライングフィッシュでは、お客様のビジネス状況や物流ニーズに応じて最適なインコタームズを提案しています。

    DAPを選ぶ際のチェックポイント

    DAPを選択する際には、いくつかの重要なポイントを確認する必要があります。これらのチェックポイントを押さえることで、スムーズな取引と予期せぬコスト発生の防止につながります。

    契約書への明確な記載事項

    DAPを契約書に記載する際は、単に「DAP」とだけ書くのではなく、以下の情報を明確に記載することが重要です。

    • 具体的な仕向地(住所の詳細、建物名、階数など)
    • 引き渡し予定日時または期間
    • 荷卸し作業の責任範囲
    • 遅延発生時の対応
    • インコタームズのバージョン(例:「DAP Tokyo Incoterms® 2020」)

    特に「荷卸し」の責任については、実務上のトラブルが発生しやすいため、詳細に取り決めておくことをおすすめします。

    輸送保険の適用範囲と保険料

    DAPでは、売り手が指定仕向地までの輸送中のリスクを負うため、適切な輸送保険の手配が不可欠です。保険の適用範囲と補償内容については、以下の点を確認しましょう。

    • 保険の補償範囲(オールリスク型か特定リスク型か)
    • 免責事項と免責金額
    • 保険料の負担者
    • 保険金請求時の手続き

    現地の通関事情と所要時間

    DAPを選択する際は、輸入国の通関事情を事前に把握しておくことが重要です。国によっては通関に時間がかかる場合や、特殊な許可が必要なケースもあります。

    例えば、食品や医薬品の輸入には特別な検査が必要な国が多く、通常より時間がかかることがあります。また、一部の国では電子機器やバッテリーなどに特別な規制があります。

    輸入国の祝祭日や通関所の営業時間なども事前に確認しておくべき重要なポイントです。

    チェック項目 詳細確認ポイント リスク
    仕向地の明確化 住所詳細、建物名、階数、緯度経度 配送先の解釈違いによる遅延
    荷卸し責任 クレーン必要性、人員手配、費用負担 作業遅延、追加費用発生
    通関所要時間 平均通関日数、必要書類、検査確率 予期せぬ遅延、保管料発生
    保険適用範囲 補償内容、免責事項、保険金額 損害時の補償不足

    まとめ

    この記事では、DAPを中心にインコタームズの基本から実務活用まで幅広く解説してきました。国際物流において正しい取引条件の選択は、コスト管理、リスク分散、サプライチェーンの効率化に直結する重要な意思決定です。

    • DAPは売り手が指定された仕向地まで貨物を届け、買い手が輸入通関と関税を担当する取引条件
    • 売り手と買い手の責任範囲を明確にし、予期せぬコストやトラブルを防止できる
    • 契約書への詳細な記載と輸送保険の適切な手配がDAPを成功させるポイント
    • DXとの連携により、物流の可視化やサプライチェーン全体の最適化が可能
    • 不確実性の高い現代の国際物流環境では、DAPのような売り手主導の条件が注目されている

    フライングフィッシュでは、長年の取り扱い実績を持つ欧州・アジアを中心に世界各国での豊富な国際物流経験を活かし、お客様のビジネスに最適な輸送方法を提案しています。国際物流でお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせフォームからご相談ください。

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