海上運賃とは|近年の動向と影響を受ける要因

  • DATE
  • 2025/10/15

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    みなさん、こんにちは!フライングフィッシュの広報担当です。グローバルなビジネスを展開する上で欠かせないもののひとつが「海上運賃」です。この数年で大きく変動し、多くの企業の調達コストや物流戦略に影響を与えています。本記事では海上運賃の基本から最新の動向、そして将来予測まで詳しく解説します。欧州・アジアを中心に世界中で強いネットワークを持つ私たちフライングフィッシュの知見を活かし、皆様のビジネスに役立つ情報をお届けします。

    海上運賃とは?基本構成と計算方法

    海上運賃は国際物流の根幹を成す重要な費用項目です。まずは基本的な構成要素から見ていきましょう。

    海上運賃の基本構成要素

    海上運賃は主に「基本運賃(ベースレート)」と「割増料金(サーチャージ)」の2つから構成されています。基本運賃は貨物を海上輸送する際の基本的な料金で、輸送距離やコンテナサイズ、貨物の種類によって決まります。

    一方、割増料金は様々な要因によって追加される費用です。例えば、燃料費調整係数(BAF)は原油価格の変動に応じて加算され、環境規制対応のための低硫黄燃料費(LSS)なども含まれます。これらの 基本料金とサーチャージの合計が最終的な海上輸送コスト となります。

    コンテナサイズと貨物種類による運賃差

    コンテナには主に20フィートと40フィートの2種類があり、サイズによって運賃が異なります。航路によっては40フィートの方がコスト効率が良くなる場合もあります。

    また、貨物の種類によっても運賃は大きく変わります。例えば危険物や温度管理が必要な冷蔵・冷凍品、大型機械など特殊取扱いが必要な貨物には追加料金が発生します。実務では 貨物の性質に合わせた適切なコンテナタイプの選定 が重要になります。

    コンテナタイプ 特徴 主な用途
    ドライコンテナ 一般的な乾貨物用 雑貨、機械部品、衣類など
    リーファーコンテナ 温度管理機能付き 食品、医薬品、生鮮品など
    オープントップ 上部が開閉可能 大型機械、高さのある貨物
    フラットラック 側面がない平台形状 重量物、大型建機など

    近年の海上運賃動向とその要因

    海上運賃は様々な要因により変動しています。ここ数年の動向と、その背景にある要因を見ていきましょう。

    2020-2023年の海上運賃の急激な変動

    2020年から2023年にかけて、海上運賃は史上類を見ない激しい変動を経験しました。新型コロナウイルスの世界的流行に伴うロックダウンにより、当初は需要が急減しました。しかし、巣ごもり消費の増加や経済回復とともに急激な需要増が発生し、供給が追いつかない状況に陥りました。

    特に中国発の欧米向け航路では、通常時の5〜10倍という記録的な運賃高騰が発生しました。この状況は多くの企業の物流コスト計画を根本から見直す契機となりました。

    地政学リスクが海上運賃に与える影響

    近年、地政学的リスクが海上運賃に与える影響も顕著になっています。ウクライナ情勢による黒海航路の混乱、紅海での船舶攻撃によるスエズ運河回避などは、航路変更を余儀なくされ、運航日数の増加と運賃上昇をもたらしました。

    特に2023年末から2024年初頭にかけての紅海・アデン湾での商船への攻撃は、アジア-欧州間の主要ルートに大きな影響を与え、アフリカ南端を迂回するルートへの変更を強いられました。これにより航行日数がおよそ14〜21日増加し、、燃料消費や運航日数の増加に伴う運賃上昇が発生しました。

    燃料価格と環境規制の影響

    海上運賃の変動要因として見逃せないのが燃料価格と環境規制の影響です。船舶燃料(バンカー油)の価格上昇は、直接的に燃料割増料金(BAF)として運賃に反映されます。

    また、国際海事機関(IMO)による環境規制の強化も大きな影響を与えています。2020年からの船舶燃料の硫黄分規制(0.5%以下)や、今後段階的に導入される炭素強度指標(CII)規制は、環境に配慮した新技術や代替燃料への投資を促進する一方で、運航コストの上昇を通じて運賃にも影響しています。

    環境規制 導入時期 主な内容 運賃への影響
    IMO2020 2020年1月 船舶燃料の硫黄分を3.5%から0.5%へ引き下げ 低硫黄燃料サーチャージ(LSS)の導入
    EEXI/CII規制 2023年以降 船舶のエネルギー効率と炭素強度に関する規制 船舶改造コストや減速運航による運賃上昇
    EU-ETS 2024年以降 EU域内発着船舶のCO2排出権取引制度 欧州航路における新たな環境サーチャージの導入

    2025年の海上運賃予測と影響要因

    では、2025年の海上運賃はどのように推移するのでしょうか?いくつかの重要な影響要因と予測を見ていきましょう。

    世界経済の成長率低下と需要変動

    2025年の世界経済は、特にアメリカとヨーロッパにおいて需要の伸びが鈍化すると予測されています。これは一部の航路における輸送需要の縮小につながる可能性があります。一方で、アジア域内、特に東南アジアでの経済活動は引き続き活発であると見込まれています。

    このような状況下では、地域ごとの需給バランスの変化が予想されます。特に アジア発の運賃は相対的に強含み となる可能性が高いでしょう。フライングフィッシュでは、ベトナムを含む東南アジアに強固なネットワークを持っているため、この変化にも柔軟に対応できる体制を整えています。

    サプライチェーンの地域化と近隣諸国での生産増加

    グローバルサプライチェーンは、パンデミックや地政学リスクの教訓から「リージョナルサプライチェーン」へのシフトが進んでいます。これは生産拠点を消費地により近い場所に移転する動きであり、長距離輸送の需要減少と短距離輸送の増加をもたらしています。

    特に中国からベトナム、インド、メキシコなどへの生産シフトは、従来の主要航路の需要パターンを変化させています。このトレンドは2025年も継続すると見られ、新興生産国からの輸送ルート確保が競争優位性を生み出すでしょう。

    燃料価格の推移と環境規制強化

    2025年も燃料価格は引き続き高値圏で推移すると予想されています。また、環境規制の強化も一層進むでしょう。IMOによる炭素強度指標(CII)規制の段階的強化や、EUの排出権取引制度(EU-ETS)の船舶への適用拡大は、運航コストの上昇を通じて運賃に影響します。

    さらに「グリーンロジスティクス」の進行により、環境負荷低減に向けたコスト転嫁が進むと見込まれます。企業としては 環境配慮型の輸送オプションと従来型のバランスを検討 する必要があるでしょう。

    要因 2025年の予測 運賃への影響
    世界経済 欧米の需要鈍化、アジア域内の成長継続 地域間の運賃格差拡大
    地政学リスク 不安定な国際情勢の継続 一部航路での運賃上昇リスク
    環境規制 CII規制の段階的強化、EU-ETSの本格実施 環境関連サーチャージの増加
    サプライチェーン 地域化の進展、近隣生産の増加 主要航路の需要減少、新興ルートの需要増

    航路別の最新動向と特徴

    主要航路ごとの最新動向と特徴を見ていきましょう。地域によって運賃動向や課題は大きく異なります。

    アジア発欧州向け航路の最新動向

    アジア発欧州向け航路は、世界の海上コンテナ輸送の主要ルートの一つです。近年は紅海情勢の悪化により、スエズ運河を回避して喜望峰回りのルートを選択する船社が増加し、輸送日数の長期化と運賃上昇が発生しています。

    また、欧州のグリーン政策の影響も大きく、EU域内発着の船舶に対するEU-ETSの適用が始まり、環境関連のサーチャージが新設されています。欧州向け輸出入を行う企業は、これらの環境コストを含めた総合的なコスト計算が必要になっています。

    北米航路の特徴と注意点

    北米航路は、特に米西海岸向けの輸送において、港湾労働者の労使交渉の影響を受けやすい特徴があります。定期的に行われる労使交渉の時期には、ストライキの可能性を見越した駆け込み需要が発生し、運賃高騰のリスクがあります。

    また、米国の輸入通関制度の厳格化も影響要因です。特に中国からの輸入に対する追加関税や、ウイグル強制労働防止法(UFLPA)などの規制は、サプライチェーンの見直しを促進しています。北米向け輸出入企業は、通関面での課題も含めた総合的な輸送戦略が求められています。

    新興市場(東南アジア・中東)の動向

    チャイナプラスワン戦略の一環として、ベトナム、タイ、インドネシアなどの東南アジア諸国への生産シフトが進んでいます。これらの地域からの輸出需要は増加傾向にありますが、港湾インフラの整備状況には地域差があり、混雑や遅延が発生しやすい点に注意が必要です。

    また、中東市場も注目されています。サウジアラビアやUAEは経済多角化政策を進めており、物流ハブとしての機能を強化しています。これらの新興市場では、現地の商習慣や規制を理解したパートナーとの連携が成功のカギを握ります。フライングフィッシュはベトナムに駐在員を配置し、現地で日本語によるきめ細かいサポートを提供しています。

    航路 主な特徴 課題と注意点
    アジア発欧州向け 紅海情勢による航路変更、環境規制の影響大 輸送日数の長期化、環境コストの増加
    北米航路 労使交渉の影響を受けやすい、通関規制の厳格化 ストライキリスク、原産地管理の重要性
    東南アジア航路 生産シフトによる需要増加、インフラ整備途上 港湾混雑、内陸輸送の課題
    中東航路 経済多角化による物流需要増加 地域特有の商習慣、規制対応

    まとめ

    今回は海上運賃の基本から最新動向、将来予測、そして実践的な対応策まで幅広くご紹介しました。海上運賃は様々な要因により変動し、企業の物流戦略に大きな影響を与えます。

    • 海上運賃は基本運賃とサーチャージから構成され、燃料価格や環境規制などの外部要因に影響される
    • 2025年は地政学リスク、環境規制強化、サプライチェーンの地域化が運賃動向の主な要因になる見込み
    • 長期契約とスポットのバランス、複数ルートの確保、運賃予測の予算組み込みが効果的な対応策
    • 航路別の特性を理解し、各市場に適した戦略を立てることが重要

    フライングフィッシュでは、欧州・アジアをはじめ、世界中に持つ強いネットワークを活かし、お客様の物流課題に最適なソリューションをご提案しています。海上運賃の変動に関するご相談や、国際物流に関するお悩みがございましたら、ぜひ私たちにお問い合わせください。経験豊富な担当者が、御社のビジネスの成長をサポートいたします。

    ぜひお気軽にお問い合わせください!

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